平成筑豊鉄道では数少ない木造駅舎。長らく赤村の玄関口として地元の皆様に愛されているこの駅は、古いローカル線の雰囲気が残る駅として、各種ロケにも使われたほか、訪れる人も増えてきています。
この駅舎を、これからも大切に使い続けることができるように、西日本工業大学、赤村の協力による産学官連携事業として、復元改装を行いました。
外観については、旧国鉄時代の資料もすでに散逸しており、完全な復元ではありませんが、「懐かしい」開業当時の雰囲気をイメージして、木質の建具やレトロ調の灯具に交換。一方、内部には制震装置を備えるなど、「最新の機能」を追加し、今後の地域交流拠点として観光など鉄道および地域活性化につなげます。
デザイン監修
西日本工業大学デザイン学部
石垣 充 教授
デザイン監修は、これまで田川線の東犀川三四郎駅、美夜古泉駅の待合室のリニューアルを手がけた西日本工業大学デザイン学部 石垣 充 教授によるものです。
駅舎
駅舎自体は特徴のあるものではありませんが、駅周辺の風景と合わせて、昭和の時代の典型的なローカル駅の佇まいを残しています。
1895(明治28)年の開業時に当地に駅が開設されたのは間違いはありませんが、現在の駅舎が当時からあるものなのか、残念ながら記録が残っていません。
無人化後、駅舎は地元の陶芸教室として活用されました。その際、出札窓口・小荷物窓口などは撤去されてしまいました。
平成の時代、他の鉄道会社も含め、古い木造駅舎が次々と解体、建て替えられていきましたが、油須原駅は静かな里山という立地と相まって、映像関係者の目に留まり、ドラマのロケ地に選ばれたことがあります。
2007(平成19)年の「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(フジテレビ)で主人公が東京へ旅立つ駅として撮影されました。また2013(平成25)年の「金田一耕助VS明智小五郎」(フジテレビ)では物語の中に登場する架空の駅として登場し、現在の窓口の壁、伝言板、手荷物・自転車預所の看板はこのときのセットの一部です。
2022(令和4)年2月、西日本工業大学、赤村の協力により、木製の建具やレトロ調の灯具に復元改装を行いました。
復元改装の概要
(1)外観・内装の復元改装
傷んでいた下見板張りや漆喰壁を補修し、塞がれていた扉・窓を復元するとともに、駅舎正面のシャッター開口部を塞ぎました。アルミサッシだった窓は桟の入った木製のものに、アルミ製の引き戸も木製の建具に交換しました。また照明もレトロ調のものに交換し、夜間はムードのある空間を演出します。
(2)鉄道作業体験室の整備
旧国鉄時代の事務室をイメージし、タブレット閉そく取扱いなど、かつての駅員の仕事が体験できるスペースとしました。また、昔の鉄道資料を展示しています。(イベント時のみ公開)
(3)協働研究室の新設
旧ギャラリーを、赤村をはじめとした地域の方々と西日本工業大学との活動拠点として、壁面にはオイルダンパを用いた制震装置(江戸川木材工業株式会社「ビルアンド」)を設置、駅の復元設計や施工を行う際の作業室として、また赤村の豊かな自然環境を活かした再生エネルギー(小水力発電など)の研究に取り組む予定です。
(4)ギャラリーの新設
駅舎に入って左側は、赤村や平成筑豊鉄道のイベント情報やポスターなどを展示する新たなギャラリーとして整備しました。協働活動の成果や地域情報、写真展などの展示を行う公開空間としても利用します。
(5)鳥居型駅名標の設置
旧国鉄時代の木製の鳥居型駅名標を復刻し、ホームに設置しました。
(6)概要図
復元改装前のようす
駅舎フォトギャラリー
木造の温かみ、新しさと懐かしさ。より愛される駅舎に生まれ変わりました。